2021.06.25
Aさんから「夫が亡くなり、ご自宅の相続手続きを依頼したい。」とのご相談を頂きました。
Aさん夫婦には子どもがいないので、「相続人は、Aさんとご主人様の弟様となりますね。」とお話しすると、「私だけかと思っていました。」と驚かれておりました。
実はAさんのように「子どもがいないので、配偶者が亡くなった場合には、その財産は自分が全部相続できるはず。」とお考えになられている方は意外と多いのです。
しかし、配偶者の親・兄弟姉妹も相続人となるため、それらの方と財産を分ける形になってしまいます。
本ケースでは理解のある弟様でしたので、遺産分割協議を行いAさんが全財産を相続する事ができましたが、以前1度同様のケースで相続分を主張された事がありました。
以前より仲が悪かった兄弟間で弟が年老いた義理姉に自身の相続分を主張してきたのです。
また、最悪な事にそのケースでは相続財産は不動産しかなく、持分に応じた金銭を弟に支払うため、住み慣れた不動産を売却しなければなりませんでした。
ただ、今ではこういった事を防ぐため、「配偶者居住権」という制度があります。
(配偶者居住権とは、建物所有者である配偶者の死亡時において、その建物に住んでいるもう一方の配偶者の居住権(自宅に住み続けることができる権利)を保護するための制度です。)
このように夫婦に子供のいない世帯は相続トラブルに遭遇しやすく、当事務所でも遺言があればというケースは多くございました。
普段から、義理の両親や義理の兄弟姉妹と良好な関係を保っている場合には、そこまでトラブルに発展するケースは少ないのですが、関係が疎遠であったりすると、義理の両親や兄弟姉妹との間に本来立つべき配偶者が不在のこともあり、トラブルにつながるケースも多く見られます。
そこで残された配偶者が安心して相続できるための対策は何かというと「遺言」です。上記のようなトラブルは、そもそも義理の両親や兄弟姉妹と相続財産を分けることから発生しています。ですので、それを回避するために、「私の財産は全て妻(夫)に相続させる」といった内容の遺言をそれぞれが作成しておけば、無用なトラブルを未然に防ぐことができます。
そしてその際は、夫婦が共に死亡した場合の財産の遺贈先も記載する事をおすすめしています。
通常「死」は順番に訪れるものです。先に亡くなった方の遺言は有効で、残された配偶者へ財産は帰属しますが、残された配偶者の財産は死者に相続させることはできません。
自分たち二人が死んだ後は、どうでもいいというのであれば構いませんが、夫婦で築いた財産を特定の人や機関に引き継いでもらいたいのであれば、その内容を予備的遺言として、それぞれの遺言の中に記載しておく必要があります。
当事務所では日々、相続・遺言について相談を受けており、遺言に精通した司法書士が在籍しておりますので、どうぞお気軽にご相談下さい。
神戸・兵庫の「街」のホームロイヤー
司法書士 福嶋達哉