2021.05.03
前回の続きです。
相続と自己破産についてですが、これはタイミングがとても重要です。
「いつ相続が発生したのか?」
「破産の手続きは開始しているのか?」
この2点が非常に重要なポイントとなります。
まず、相続が破産手続開始決定前に発生している場合は、たとえ自己破産の申し立ては済んでいる状態であっても自己破産を取り下げることで相続放棄は可能です。
もちろん破産の申し立てすら行っていない状態なら、はじめに相続放棄を完了させることで、一切の遺産を相続しないで済みます。
相続放棄した人は始めから相続人ではなかったことになります。
ですので、そのあとに自己破産をした場合も、遺産を取り上げられて債権者への弁済に回されるということはありません。相続放棄は身分行為なので、自由に行うことができるからです。
つまり、相続財産を受け取ることは出来ませんが、他の相続人には一切迷惑をかけないことになります。
これに対して残念な結果になってしまうのは、財産をとられてしまうと慌てて遺産分割協議を行い、自己破産予定者以外の他の相続人名義に相続登記や預貯金の変更等の相続手続きを行ってしまう事です。
これをやってしまうと、後で破産の手続きに入ったときに、破産管財人が「否認権」を行使することになります。否認権を行使されると、遺産分割協議が無効になって、破産者の共有持分が破産の手続きに組み込まれます。
つまり、財産隠匿により遺産が取り上げられることになってしまいます。
相続放棄の申述期間が経過している状態で自己破産の申し立てをするなら、下手に相続手続きなどせずに、ありのままの状態で申し立てをしましょう。破産を検討している相続人以外の方が実質的な所有者であれば、その不動産が破産の手続きに巻き込まれることはないかもしれません。
これに対し、破産手続開始決定後に相続が発生した場合、これが一番救われるパターンです。
破産手続開始決定後に破産申立人が得た財産は「新得財産」と呼ばれ、完全にその人が自由に処分できる財産となります。
ですので、破産手続開始決定後に相続が発生した場合は、相続人である破産申立人は、自由に遺産分割協議できますし、取得した遺産を自由に処分することもできます。もちろん破産の免責が決定すれば、自分の負っていた借金は帳消しになるので、支払う必要もありません。
そして、最も良くないケースは、自己破産申し立て後、開始決定を待っている状態で相続が発生しそのまま開始決定が出てしまう事です。
これはもう、ぐうの音も出ない状況で、破産管財人によって遺産の持分は相続財産に組み込まれ、各債権者へ按分弁済となります。
Aさんの場合も自己破産の申立までを行い、開始決定を待っている状態でしたので、非常に似た状況でしたが、相続が発生したとの連絡を受けて即、裁判所へ開始決定の有無を確認しました。
すると、まさにその当日の17時に破産開始決定予定でしたので、即日自己破産を取り下げる事が間に合いました。
その後は、相続放棄の申述を行い、兄弟名義に不動産の名義変更を行った上で改めて自己破産の申し立てを行い無事に免責決定がおりる運びとなりました。
これらの事象はその事務所の経験や知識に大きく左右されます。
自己破産、相続放棄でお悩みの方がいらっしゃいましたらお気軽にご連絡下さいませ。
神戸・兵庫の「街」のホームロイヤー
司法書士 福嶋達哉