2022.05.17
外国人も売買や贈与、相続等によって日本国内の不動産を取得することが可能です。もちろん、不動産の所有権や共有持分を取得すれば、所有権移転登記を申請し、所有者や共有者として登記を受けることができます。また、新聞等で報道されているように、外国会社や外国在住の外国人が投資目的等で日本の不動産を購入することができます。ご質問はご夫婦がマイホームを購入するとのことですので、外国人である配偶者も日本に住所を有することを前提にしてお答えします。
住宅の登記に関する優遇措置についてですが、居住用の建物が一定の要件を満たす場合には、登記申請時に納付する登録免許税に軽減税率が適用されます。これは、日本人も外国人も同じです。
次に、住宅ローンについてですが、司法書士の日常業務でも、永住者や日本人の配偶者等であって、安定した所得のある外国人が、住宅ローンを利用して住宅を購入する場面があります。そのため、外国人であっても、住宅ローンを組める可能性はありますので、住宅ローンによる購入をお考えなら、配偶者がローンを利用できるか、金融機関に相談されるとよいでしょう。なお、所得税のいわゆる住宅ローン控除など税制上の優遇措置も日本人と基本的に同様です。詳しくは税理士等の税務の専門家にご相談ください。
ここまで、不動産の取得と登記に関して、国籍による差異がないことを説明しました。最後に、ご注意していただきたいことは、外国人の配偶者が、マイホームを取得後に亡くなった場合です。この点は、国籍により異なる部分となっています。一般論としては、所有者がお亡くなりになり、相続が発生した場合には、被相続人(お亡くなりになった方)の本国法が適用されます。誰が相続人なのか、相続分や遺産の分割方法も、本国法によって定まります。ただし、本国法に、不動産の相続については不動産所在地の法律を適用する旨の規定がある場合には、日本法に従うことになります。
まだまだ先の将来のこととは思いますが、ご自身やお子さんたちのためにも、配偶者の本国法について調べてみてはいかがでしょうか。
2021.07.30
さて、遅くなりましたが前回の続きです。
法務局からの連絡は、抵当権者からの委任状に実印での押印及び印鑑証明書を添付せよとの事でした。
事前通知での登記の際には根抵当権者の登記済証・登記識別情報は再発行できないので、変わりに印鑑証明書と実印の押印された委任状が必要になります。
司法書士には何てことないですが、
登記申請書を作成したこの行政書士にそこまでの知識がなかったのは仕方無い事です。
ならばと、所有者様は抵当権者へ実印の押印と印鑑証明書を求めましたところ、
少々気難しかった抵当権者は「そんなことは聞いてない。」と協力要請を一蹴されました。
元々、えらく高金利な上、やれ交通費ややれ協力費やらと金銭を請求されていたようです。
ここで司法書士へ相談されたら別の方法へ移行することが可能でしたが、
ずるずると交渉し続けている中で、なんと抵当権者が体調を崩してお亡くなりになられました。
そうなると今度は抵当権者の相続人に登記申請をお願いせねばなりません。
相続人が多岐に渡り海外在住や行方が分からない方もいるようでここで当方に相談にお見えになられた次第です。
やはり、餅は餅屋です。
有難い事に当事務所にはホームページを見られた方々より多くのご相談を頂いておりますが、
自身の専門でない分野は当然ですが、
ある程度は出来そうかなといった案件でも、
信頼できる専門家を紹介させて頂いております。
それがお互いの為かと思います。
半端な知識での対応は危険を招く。
再認識させられる案件でした。
神戸・兵庫の「街」のホームロイヤー
司法書士 福嶋達哉
2021.07.08
先日、「個人が抵当権者である抵当権の抹消登記をお願いしたいのです。」とのご相談を頂きました。
早速ご来所頂きお話を伺ったところ、
実は自分で登記しようと試みたが結局出来なかったとの事で、
登記申請の取下げ後の書類も一緒にお持ち頂いておりました。
書類を確認するとどうもひっかかる。
「これはご自身で作成されたものですか?」と尋ねたところ、
元々は知り合いの行政書士に相談しており、
書類だけ作ってあげると言われハンコを押しただけとの事でした。
もちろん有料です。
これは「非司行為」といって、司法書士でない者が司法書士業務を行うことを言い、
立派な犯罪であり違法行為です。
行政書士は会社の議事録や定款の作成はその業務の一つですので、
会社設立や役員変更などその延長線上の商業登記の非司行為はあると聞いておりましたが、
抵当権の抹消登記などおそらく何らの経験も無い分野までタッチしている方がいるとは驚きました。
しかし、それが言いたいのではありません。
抵当権を抹消するには抵当権の設定登記をした際の「登記済証(登記識別情報)」と呼ばれる書類が必要です。
自宅を購入した際には「登記済権利証」と呼ばれる書類が交付されますが、
こちらは聞いた事がある方は多いと思います。
内容は同じで、自身が「所有者だ。」「抵当権者だ。」「地上権者だ。」といったことを証明するものです。
このケースはこの登記済証が無かったのですね。
この場合は「事前通知」もしくは司法書士か弁護士による「本人確認情報」が必要になります。
・事前通知とは、登記済証が提供されないで申請手続きがなされたとき、その登記が登記名義人本人の意思に基づいて申請されたのかを確認するため、法務局から登記済証を提供すべきであった登記義務者に「こういう内容の登記が申請されているが間違いないか。」という旨の通知が届きます。それに実印を押印して送り返すことによって手続きが進行するというものです。
登記官側で確認したうえで登記手続きを実行するための制度です。
・本人確認情報とは、登記申請をする際に登記済証を提出できない場合、資格者代理人(司法書士、弁護士)によって提供される申請人が登記申請権限のある登記名義人であることを確認できる事項が記載されている情報(書面)のことです。
このケースでは書類を作成しているのは行政書士です。
本人確認情報は作成できないので必然的に事前通知が選択されます。
登記申請書は通常の抵当権抹消と同じですので、
書籍を参考に申請書を作成し登記申請したのだと思います。
登記申請後、法務局から補正(登記申請に不備がある)連絡がありました。
何故でしょう。
少し長くなりましたので続きは次回に。
神戸・兵庫の「街」のホームロイヤー
司法書士 福嶋達哉