2023.03.02
相続放棄のご依頼を頂いている方より、故人の携帯電話の解約してしまっても大丈夫かとのお問い合わせを頂くことがよくあります。
相続放棄は、所定の期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることによって、相続放棄をすることができます。
ただし、相続放棄をする前後で、一定の行為をしてしまった場合には、借金を含めた財産の相続を認めたものとみなされてしまい、相続放棄をすることができなくなってしまいます。このような制度を「法定単純承認」といい、つまりこれが相続放棄を考えている相続人がしてはいけないこととなります。
法定単純承認に該当する事由としては、民法では以下の事由を定めています。
①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(預貯金の解約、不動産の名義変更、車の売却など)
②相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄をしなかったとき(「熟慮期間」が経過したとき)
③相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、 相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私的に消費し、または悪意で相続財産の目録中に記載しなかったとき
逆に相続放棄する相続人でも以下の行為は可能と考えられています。
①相続財産の調査
②相続財産の管理
③保存行為(例えば、消滅時効の期間が迫っている債権について「時効の完成猶予や更新をすること」、また老朽化によって「倒壊寸前の建物を補修すること」など)
被相続人が携帯電話の契約をしていた場合には、相続放棄を行えばその支払い義務は免れるとはいえ、基本料金が発生し続けるため解約をしてしまいたいと思います。
相続債務の増加を防ぐという観点からは、保存行為にあたるとも思えますが、回線契約も相続の対象であると考えると勝手に解約してしまうと相続財産の処分に該当すると判断される可能性があります。不動産の賃貸借契約も同様です。
判例によって確立した見解があるわけではないため、相続放棄を予定している場合には、故人名義の携帯電話の解約は避けた方が安全といえます。
法定単純承認に該当する行為であるかは、ケースバイケースであることも多いため、ご自身で判断することに不安があるという場合には、当事務所までお気軽にご相談下さいませ。