2023.02.09
遺言で、財産を相続できなかった兄弟から、遺留分を請求されたがどうすれば良いかとご相談を頂きました。
遺留分とは、相続人の最低取得分として保障されている遺産の一定割合のことです。これは、遺言の自由を制約しますが、遺言を完全に自由にしてしまうと、全財産を遺言で他人に譲ることも可能となるため、相続人の生活保障を図るために一定割合を留保すべきこととされたのです。
遺留分が認められるのは、配偶者、子、孫、直系尊属(父、母、祖父、祖母)が相続人になった場合で、兄弟姉妹、おい、めいは相続人になっても遺留分は認められません。
認められる遺留分の割合は、配偶者、子、孫については相続分の半分、直系尊属については3分の1で、同順位の相続人が複数いる場合は、さらにその頭割りになります。相続人が配偶者と子2人である場合、子ひとりの相続分は4分の1ですが、遺留分はさらにその半分の8分の1です。遺留分を請求するかどうかは各相続人の自由で、ある相続人が請求しなくても、他の相続人の遺留分が増えるということはありません。
また、遺留分の算定の基礎となる財産は、被相続人の死亡時の財産だけでなく、1年以内に生前贈与(相続人に対して婚姻、養子縁組のため又は生計の資本としてした贈与は10年以内)された財産も含みます。被相続人と受贈者の双方が遺留分を侵害することを知っていた場合は、1年(相続人に対しては10年)以上前の贈与も含みます。死亡時の遺産総額が4千万円であったとしても、死亡前1年以内に2千万円の生前贈与をしていれば、先の例の子ひとりの遺留分は500万円ではなく、750万円になります。
遺留分を侵害された場合、補償を求めることができます。以前は、遺産全体に対して一定割合(例えば8分の1)を取得するものとされ、この共有持分を金銭で清算するかしないかは当事者の自由とされていたので、金銭的清算を拒まれたり、清算額が折り合わないなどで紛争となることが多くありました。
近時の民法改正により、遺留分の侵害額の補償は、最初から金銭による清算とされ、補償のための金銭がない場合、裁判所に期限を付けてもらうこともできるようになりました。数年程度の延べ払いが認められるようになったのです。弟から請求を受けた相談者は、これに応じる義務はありますが、即時の支払が困難であれば、分割払いや、交渉次第で特定の不動産等による代物弁済によることはできます。