2024.03.01
認知症になって判断能力が低下すると、お金を預金口座から下ろせなくなったり、不動産の売却がスムーズに行かなくなる事もあります。
それらに備えて、判断能力がしっかりしているうちにお金や不動産などの財産を家族に託して、管理などを任せる手続きがあります。
このような家族に信託する財産管理の手続きは民事信託もしくは家族信託とも呼ばれています。
例えば、親がお金を自分の子に信託したとします。
信託したお金は子が信託用の口座で管理できますので、その後、親が認知症になって判断能力が低下したとしても、子が引き出して親の生活費・医療費・施設費・介護費などの支払いのために使うことができます。
信託口座ではなく子が自身の口座、もしくは親自身の口座で金銭を管理していた場合、「親のためにしか使えない」と使いみちを限定したとしても、周りの人間にはそれが分かりません。
それを分かるようにするのが信託という仕組みです。
子に渡される金銭は、「親のためにしか使えない」という特徴をもち、言ってみればお金に色をつけるわけです。
将来、子が亡くなった場合でも、この金銭は子の遺産とはなりませんし、子が破産した場合でも、差し押えの対象にはなりません。
また、親の不動産をあらかじめ子に信託しておけば、その後、親の判断能力が低下しても、不動産の売却は子が手続きできます。
なお、不動産の売却代金は子が受け取って信託用の口座で管理しますが、子のものになる訳ではなく、親のために使うべきものです。
親が賃貸物件を持っているようなケースでも、判断能力が低下すると新たに賃貸借契約を結んだり、物件管理をしたりできなくなりますが、判断能力がしっかりしているうちに子に信託しておけば、その後の不動産の管理や賃貸借契約は子ができるようになります。
不動産の賃料などの利益は、子のものになる訳ではありません。
お金の管理は子が信託用の口座でしますが、そのお金は親のために使います。
以上のように、親の財産をあらかじめ子などの家族に信託することによって、将来、親が認知症などになったときのために備えておくことができます。
なお、信託では信託した財産の承継者を指定しておくこともできます。
例えば、初めに父親の財産を子に信託して、子は父親のために財産管理をしていたとします。
父親が、自分が亡くなった後の承継者は自分の妻(子からすると母親)にすると指定しておけば、父親が亡くなった後は、子は母親のために信託された財産の管理を続けていくということになります。
また、父親が亡くなった場合は、子は信託財産の管理を終了して母親に財産を渡すという指定も可能です。
このように、信託は認知症対策のほか、相続対策にも活用できます。詳しくは、当事務所までご相談下さいませ。